野村川湯YH 下関の「温泉1000湯」 ♨   一緒に浴びよう! | 野村川湯YH 野村川湯ユースホステル

下関の「温泉1000湯」 ♨   一緒に浴びよう!

連載 温泉

その5
小屋原(こやはら)温泉
熊谷旅館
下関(一柳 仁)

 

(島根県大田市三瓶町)
入湯/2012年1月
源泉掛け流し
湯温/約38度
泉質/炭酸泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉など

 

山陰地方の名峰といえば、すぐ思い浮かぶのは、大山(だいせん)やないんかなぁ。ところが温泉好きの間では、断然、三瓶山なんよ。……聞いたこと、ないでしょう。

三瓶山は、出雲市の南西、おおよそ島根県の中央部に座る活火山でね、そんなに大きな山(標高=1126メートル)でもないんやけど、カルデラの周囲を6つの頂が囲んでいる。その総称が、三瓶山やね。それでその山麓にはぐるっと、とてもいい、個性的な温泉が湧いとるのよ。だから温泉ファンの間にはよく知られとってさ、この地域一帯を、秘湯の宝庫、みたいないい方をする人もいるほどでね。

……そうやねえ、下関から車で向かうとすると、近くまで行くのに、大体、5、6時間はかかるかなぁ。それに、三瓶の温泉はみんな山の奥の方やからね、悪路隘路も多くてなかなか行きにくいのよ。

そんな三瓶山の山麓に点在するアクの強い温泉のなかから、今回は、小屋原温泉を選んでみた。ここは江戸時代には開湯し、利用されていたらしく、歴史は古い。現在、源泉は熊谷旅館にあって、日帰り湯でも充分に楽しむことができるしね。

この旅館は、渋いというか、結構な感じの年輪を重ね、山ん中にぽつんと建つ一軒宿で、ここも周囲にはなーんもない……。

廊下の右が、それぞれ家族風呂のような個室形式になっていて、プライベートを確保しながら源泉掛け流しの炭酸泉の湯が楽しめる。

またか、といわれても、いつも俺の行く温泉なんて人里離れたとこばっかりやし、それにそういうとこにしか、ええ湯は湧いとらんのよねえ。だから、わざわざあっちこっちを尋ねて歩く。それに、遠く旅をしてまでも入いってみたい湯があるんだよなあ。

それでこの宿には、家族風呂みたいに区分けされた小さな風呂場に浴槽が4つほどあって、そのどれにも源泉が引かれ、掛け流しで湯浴みができる。だから誰にもジャマされずに、奥さんとも、彼女とでも、ふたりだけで入れるしさあ。俺は誰と入ったか? ……そんなもんは、まぁ、どうでもええよ。

それに誰と温泉に入っても、俺の場合はまったく心は乱さんよ。それよりも、湯を感じたいからさ。湯に浸かるときは、マンボウにでもなったような気分で、ほわ~っと、ひたすら揺蕩(たゆた)うだけやしねえ。そうして、昨日の自分からは離脱し、明日の緊張からは解放し、今ある湯だけに集注する。そうやって、じっくりと湯浴みする。

温めの湯に、じっくりと、ふわっと浸かって全身で温泉を感じている筆者。真冬の、寒い日の訪問だったが、体はとても温まり、湯冷めもしにくいという。

さて、ここの湯の特徴は、炭酸泉で、それと、比較的に温度は低くて温湯(ぬるゆ)ということやろうね。だから、ぷくぷくと泡が体に張り付いてくるようだし、湯にはネットリとしたような感覚がある。じっくり、ゆっくりと浸かるとさ、体の奥まで熱が伝わるように感じるのは、炭酸泉ならではだし、温くてもね。それに冬場でも、湯冷めがしにくいというのも特徴やねえ。ともかく、ええ湯なんよ。

それと、湯船のなかやその周辺は、褐色の析出物で凄いことになっていてね。これはね、ヌルっというのではなく、カッチカチに固まっていて、その雰囲気もいい。こういうのを見ながら浸かると、なにやら、えらくありがたい感じもするよねえ。

ここに行ったのは、真冬だったけど、いつまでも体がぽっぽ、ぽっぽとしていてね、余韻にも浸れて、ええもんだったよ。(談)

コメント

野村川湯小学校