野村川湯YH 下関の「温泉1000湯」 ♨   一緒に浴びよう! | 野村川湯YH 野村川湯ユースホステル

下関の「温泉1000湯」 ♨   一緒に浴びよう!

連載 温泉

いつも、ぼーっと、寡黙に、控え目に見える下関は、これまで、暇を見つけては全国の温泉場を歩いて廻り、すでに1000を越える湯に入ったといいます。

たくさんの湯に浸かって身をもって知ったのは、温泉は、ただ見ているだけでは、なにも分からない、ことともいいます。

人生もそうであるように、身をもって体験し、感じることで、じわじわと薄皮を剥ぐようにして、その本質が姿を現すのだそうです。

……では、下関に、全国の名湯を案内してもらうことにしましょう。

 

その6
真賀(まが)温泉
下関(一柳 仁)

 

(岡山県真庭市仲間)
入湯/2024年5月
源泉掛け流し
湯温/約39.5度
泉質/アルカリ性単純温泉

 

岡山県の中北部、ちょうど名峰・伯耆大山の裏側辺りの中国山地を分け入った先の、川と山の狭間に、ひっそりと佇む温泉があってね、真賀温泉という。

この温泉場には以前にも、何度か訪れたことがあって、今年の春にも行って来た。こうして時々、この温泉の湯触りを思い出しては行ってみたくなるほどに、これがなんともええ温泉なんよ。

ひと言でいうと、真賀温泉は銭湯みたいな感じの温泉場で、なかにはいくつかの浴槽がある。なかでも温泉通たちの狙い目として、ひとつの小さな浴槽があって、それは「幕湯」と呼ばれてるのよね。

江戸時代、津山藩の藩主が湯浴みした際、衆生庶民たちとの混浴を避けるため浴場の一部に幕を張って仕切り分けたことにはじまる、とか。まあね、封建時代のことだし。

でもね、現代の温泉ファンたちがこれに入りたいのは、そういう貴人気分を味わいたい、というようなスノッブな理由じゃないんやけどねえ。

今回は混浴につき、入浴中の写真はカット。湯から上がった後、火照った体を薫風が撫でて行き過ぎ、あぁ心地よし。

……では、なにが特別か、というと、この3、4人も入れば満杯になりそうな狭い浴槽の足許からは、源泉がこんこんと自噴していてね。しかも、熱すぎず、冷たくもなく、そのままの湯温で調度いいという点が絶妙でさ。混じりっけなしの、温泉の源泉そのものに体を直接、当てて、全身を浸すことができるのって、そうはないよ。

しかもここのは、アルカリ性の単純泉なので、湯がねっちょりしていて、やや大げさにいえば、ボディローションみたいに、重く、体にまとわりつく感覚でね、これもすこぶるよろしい。

それと、忘れてはいけないもうひとつの特徴は、この幕湯は、混浴でね。ふたりで入ったら、体が触れあうほどに接近するし、3人で入ったら、きっと複雑なことになっちゃうよなぁ。そんなこともあってか、「日本一狭い混浴の浴槽」ともいわれる。

今回は、幕湯には先客がおるんかいなぁ、と気を揉んでたら、湯屋のオヤジさんが、今なら誰も入っとらんので、ゆっくり浸かれるよ、といってくれてラッキーだった。

で、誰と一緒に入ったかは、ここでは絶対にいえんし、しつこくその時の写真を用意しろ、ともいわれたけれど、それももちろん出さんよ。どうか読者の皆さんは、入浴時の様子を、想像の翼を拡げてせいぜい妄想してみて下さいね。

こうして今年の春の旅では、いくつかの温泉場を廻ったり、しっとりとして落ち着いた名所をのんびりと見て歩いたり、美味いものも食べたりしたね。いい旅だった。

このヒガンザクラの説明は、案内板を読んで下さいね。あんまりいうと、どこやらの樹木医に「出しゃばるんじゃない」とか、いわれそうなので……。

中国山地に千年の間、独り立つ一本桜は、葉桜姿もキリリとしていてそれは見事だった。

もう上野駅をねぐらにした浮浪者から、お金を恵んでもらうような見てくれでもなく、今時は、すっかり「大人の休日倶楽部」って感じかなあ、……西日本なんやけど。(談)

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