出会った人にこそ
デュッセルドルフ/Dusseldorf(ドイツ)
ナガサカ(長坂 肇)
[旅のデータ]ドイツ連邦共和国の西端部、ライン・ルール地方の中核地としてとして栄えるデュッセルドルフは、金融や経済が発達する国際都市でもある。そのため日系企業も多く進出していて、ロン・パリに次ぐ欧州ビジネスの拠点だ。市部の人口はおよそ58万人。気候は冬期は札幌に似ていて厳しく、夏は気温は上昇しても、湿度が低いために過ごしやすい。また芸術・文化の街としてもよく知られていて、市民もKunst(Art)には理解が深く、ハイネの故郷であり、ドイツが産んだ最高の画家といわれるゲルハルト・リヒターは、デュッセルの誇りだ。都心部には、様々な個性的な現代建築も立ち並び、一方、旧市街地域やライン川沿いには中世の古城なども残され、美術館や博物館も多い。成田からは、毎日、直行便が飛んでいて、フライトは約12時間ほど。今回の旅も、このルートを使った。
■どいつんだ? おらんだ!
いきなり50年前のダジャレで申し訳ない。
だがこの時、ドイツとオランダが隣国同士だとはじめて知り、今回はこの題名に。
何年か前に、2度ほど訪れたドイツ、オランダ界隈。すごく良い思い出となって心の奥に沈んでいるぶらぶら歩きを、紹介しようと思う。
さて前日に所用を終え、早朝、ジュネーブを発ち、空路でドイツのデュッセルドルフへ。
まず、ここからすぐ隣の、オランダの町を訪ねてみようと思った。清潔な鉄道でおよそ1~2時間。電車はいつの間にか国境を越えており、オランダのフェンロー駅に着いていた。
この日はちょうど休日で、町はとても賑わっていた。
サーカス小屋のような遊園地や路上のカフェ、バー。小さな地方町なので、歩き回るのにもちょうど良いスケール感だ。すぐ隣なのに、ドイツとは微妙に町の趣きが違うように感じられた。それにパブやバーなどは、アイリッシュの影響が多いようだ。人々は自分たちの時間を、気ままに、その人らしく楽しんでいるようだった。
町中には車が入って来ず、お陰で、欧州の古い映画を見ているような、ゆったりとした気分の一日が過ごせた。
さて、デュッセルドルフへと戻ろう。
メルケル首相の国、ドイツのイメージは、イカつくて、おっかない。なにもアンゲラ・メルケルさんの顔付が険しく、ごつい、といいたいのではなく、ドイツの印象が、という意味でだ。いつか、パパラッチが撮ったメルケルさんの水着姿を見たことがあるが、なかなかのもの? だったような。
それはともかく、ドイツ人は皆優しくて礼儀正しく、町も綺麗、顔もちっとも怖くなんかない。これは実際に行ってみて、人と接してみてはじめてわかることだ。しかも、ビールは多種で、どれも美味しい。
ドイツ人は決して笑わない、と思っていたが、皆、笑顔がとても素敵だった。ドイツ人はやたらにデカくて、身長は3メートル以上あるとも思っていたが、これもそうでもない。すべては僕の偏見だった。
道を尋ねようかと思っていたら、先におじさんから「どこへ行きたいんだ?」と声をかけられたのには驚いた。困っている旅人を見たら、放っておけないんだ。旅の善し悪しは、出会った人にこそある。これは、北海道以来の僕の教訓だ。
ドイツは国全体で、昔から、アイドリングストップや自然保護に力を入れている。それに、スクラップ&ビルド、とかいって、無駄に町を壊して開発などしようともせず、歴史を大事にして古い町並みを活かして保ち、永く大切に使っていく。そして裕福な気持ちで暮らしている、そんなふうに感じた。
何が大切で、何が幸せなのか……。ゆったりとした、豊かな時の中に、そんな思いがぐるっと躰を巡った。また機会を見つけて、ぜひ訪れてみたいドイツの町だった。■
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