(2)イチョウ/
唯一無二の種
Ginkgo biloba
真くん(堀 真也)
♪この木なんの木……イチョウです。
そう、誰もが知っていて誰も気にしないような木ですが、日本の街路樹では最も多く使われ、学校や公園はもちろん、神社仏閣にある巨木などはご神木として祀られているように、昔から人々に親しまれている木ではないでしょうか。
でもこのイチョウ、絶滅危惧種だって知っていましたか? ロンドンやニューヨークをはじめ世界中に存在するような木が、絶滅の危機にあるとはちょっと信じがたいですよね。
ではイチョウ物語のはじまり、はじまり~。
イチョウは約2億年前、地球の大陸がまだひとつだったころ誕生し、時を掛けかなりの広範囲で育っていきました。草食の恐竜や古代の哺乳類がイチョウの実(注1)を食べ、硬い種皮で覆われた種子が消化されず遠く離れた地で排泄され根付き育ち、を繰り返していったからです。(イチョウの化石は世界各地で発見されています)。しかしその後の氷河期と恐竜や動物たちの絶滅により、17種あったイチョウは1種のみを中国の山間部にわずかに残しただけで、あとは全て消滅したのです(今あるイチョウは1目1科1属1種の唯一無二なのです)。やがて出現した人類がその残されたイチョウと出会い、樹形や黄葉の美しさ、実(ギンナン)の美味しさを知り、守り育ててきたのでした。
日本への渡来時期は室町時代とされ、その美しさや中国渡来ということが神聖視され、多くの神社仏閣に植えられました。そして江戸時代、長崎の出島からヨーロッパに渡り、世界へと広がって行ったとさ。そうなんです、野生で自生するイチョウは唯一中国に残ったものだけで、その他の世界中のイチョウは、人の手により運ばれ栽培植栽されたものなのですよ。だから中国に生育する自然更新のみで生き続ける野生のイチョウ林が、絶滅危惧種に指定されたのです。なるほど。
しかし、1億5000万年前以前に起源を持つ動植物のほとんどが絶滅しているにも関わらず、2億年もの時を経て今も存続していることは奇跡であり「生きる化石」と呼ばれるのも頷けますよね。イチョウってすごい!
さて、イチョウの実(ギンナン)は悪臭なのだろうか? 確かにくさい、ウ・コ臭い。しかし恐竜や古代哺乳類にとっては御馳走の香りで「今年もギンナンが生ったヨー、たくさん食べて種を遠くへ運んでネー」と、イチョウの生存戦略としての香り作戦だったのでしょう。今では臭いだけですが、それでもタヌキと犬が食べることがあるらしいですよ、確かに犬は食糞するし、人間でもスカトロジストとか……。(注1、ギンナンの臭い部分は果肉ではなく外皮種で、言い換えればリンゴの皮が肉厚になったようなもので全てが種子なのです。)
イチョウは雌雄異株(しゆういしゅ)といってオス・メスがあり、ギンナンが生るのは雌木です。ですから近年の街路樹としてのイチョウは、雄木だけを選定し植栽するようになりました。ところが雄木の集団では稀に性転換が起こり、突如、雌木になりギンナンが生ったなんて話を聞いたことがありますが、これは都市伝説的なもの。
しかし、オハツキイチョウ(国指定天然記念物)では一部の枝で体細胞突然変異が起こり、結果、性転換が起こったものと判断された報告があり、現在も東大大学院の研究室などで調査研究中だそうです。もしこれがイチョウの子孫繁栄のためになせる業とするなら、自然界の奥深さに驚嘆の声を上げてしまいそうです。
美しい樹形と黄葉。美味しいギンナンと漢方薬になる葉。火や風、病害虫にも公害にも強い「生きる化石」イチョウですが、現代社会では絶滅させるのも守っていくのも、我々人間であることを忘れてはならないのです。
初冬の黄金色のイチョウ並木でデートなんてロマンチックですよね。でもギンナンは踏まないでね。ましてやその靴で車には乗らないでね。ではまた。真。■
コメント
イチョウは絶滅しそうなんですね
古代のイチョウのはなし、面白かったです
ありがとー!
千歳はスカトロジストですか?