たとえば、玄関廻りやリビングなど、暮らしのなかに生きた季節の花々が活けられていたり、小さなガラス器に、ちょこんと野草が投げ入れられていたりするのを眺めるだけで、清々しさや、爽やかな精気すら感じたりして、心地よいものです。
そこに、美しさやはかなさと、それらと背中合わせになったような、小さな、でも確かな、命の息吹があるからでしょうか。
洋の東西を問わず、元より多くの花々には、それぞれの花言葉が宛てられてきました。
だから、その花を見て、美しささえ感じられれば、花の素性や説明はあまり必要がないのではないか、……と思うかも知れません。でも、そうはいっても、やっぱり見目麗しい花たちは、いつも言葉足らずで、控えめなのです。
フラワーショップの主として、またフローリストであり、アレンジメントのスクーリングなど、日々、奔走するのりちゃんに、もの言わぬ花たちの代弁者になってもらって、花の気持ちを語ってもらいます。
(4)アナベルの
移ろう美を眺めながら
のりちゃん(畑中範子)
グリーンアナベルの花言葉
ひたむきな愛
辛抱強い愛情
アジサイ科の落葉低木。
北米大陸の原産で、アメリカアジサイやセイヨウアジサイとも呼ばれる。
最近、都心にあるフラワーショップでは、ドライフラワーを飾る店が増えています。なかには、生花は一切、扱わず、ドライの専門店もちらほらと目につきます。
とくに若い人たちの間に人気があり、たとえば美容院のオープンなど、お祝いに贈る花が、いきなりドライで、というオーダーもありますしね。贈られる側も、贈る方も、気に入ってるようです。
水を替えたりしなくていいし、長くそのまま飾れて面倒もないのが、人気を下支えする要因のようです。……とはいっても、ドライフラワーをクールに美しい、カッコいいと感じているのは、圧倒的に若い世代です。私のこれまでの経験と感覚からいえば、70歳以上の方たちは、命がないからといって、ドライフラワーをほとんど受け付けません。
このHPの中心読者は、まだ60歳前後というところでしょうけれど、ドライフラワーを眺めて、さて、どう感じるのでしょうか?
今回、紹介する花々は、ドライフラワーにして観賞し、楽しめるようにと、リースなどに仕立ててあります。
土台となるリースベースを準備し、そこに生きた花を、熱で溶かした接着剤(グルーガン)を使って固定していきます。そのままテーブルの上などで1週間ほど乾燥させてから、壁に掛けて、後はじわじわと気長に乾かしていきます。すると花の色が、ゆっくりと変わり、暮れ沈もうとする夕焼け空の変化を眺めるように、移ろっていきます。ベテラン画家のパレットみたいでもあり、何色、なんてとてもいえないところが妙味です。
もちろんリースにしなくても、花入れにあった花を新鮮なうちに茎ごと束ねて、そのまま吊してもよいのですが、その場合は、壁などに密着させないように、洗濯物を乾す要領で乾燥させて下さい。ただし、赤いバラなどは、色があまり残らず、むしろオレンジ色のバラがドライになると赤みを帯びたりします。花の持つ性質もあるし、ともかく、いろんな花でチャレンジしてみると、お好みのドライが作れるかも知れませんね。
それと裏技ですが、とくに夏場、車のなかに吊って急速に乾燥させると、美しく仕上がりますよ。試してみて下さい。
雨の季節が似合うアジサイを、その花の美と、命に思いを巡らせながらドライフラワーにして変容を楽しむのって、豊穣な時の流れなんですよ。少しだけ辛抱強い愛が、必要かも知れませんけれどね。(談)
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