下関の「温泉１０００湯」　♨ 　 一緒に浴びよう！ 　　　　　

その１
たまて箱温泉
下関（一柳　仁）

（鹿児島県指宿市福元）
入湯／２０１３年６月
源泉掛け流し
湯温／１００度
泉質／ナトリウム・塩化物強塩泉

最近、ＰＣに俺が入力したデータをざーっと眺めてみたら、約１２００湯の全国の温泉に入った勘定になるみたいやねえ。

最初は、ガイドブックを調べたり、ネットを見たりして出掛けたこともあったけれど、だんだん分かってくるとさ、とにかくもう温泉場に行ってしまって、後は車で現地をうろうろしながら、自分の足で探すねえ。そのうちに、どの辺によさそうな湯や風呂場があるか、なんとなく分かってくる。それがええんよ。

桶は九州88湯を制覇してもらい タオルは別府88湯を制覇してもらった。

それで、実際に、湯に浸かってみる。

温度、湯量、成分とか、人の評価は、様々あるし、それはそれで結構よ。

でもね、温泉は、自分で実際に入ってみんと、なーんも分からんのよ。大切なものは、目では見えん。浸かってみて、それで気に入るか、入らんか、を自分自身が感じて、決める。

俺の場合は、源泉がピューっと流れ出ていて、そこにそのままなにも混ぜずに気持ちよく入れるような湯が、最もええ温泉だと思うちょる。

知っとると思うが、俺は川湯のみんなからは、「下関」って呼ばれる。

もちろん、山口県の下関に生まれて育ったからで、だから、九州はほん近いんよ。

「たまて箱温泉」は、薩摩半島の先端にあって、ただ露天風呂がぽつんとあり、それがそのまま太平洋に面していて、視界をさえぎるものはなにもなく、ひたすら雄大で、開放的な湯やねえ。遠くに、薩摩富士とも呼ばれる開聞岳が、美しいコニーデ型の裾を長く、なだらかに引いていて、それもええ眺めよ。

ここは湯量もこんこんと豊富で、露天の湯が、俺の気のせいだろうけれど、表面張力して盛り上がって見えたりするんよね。

この露天の湯に、深く身を沈めて、海から吹く心地よき涼風を浴びていると、もう、人生のなにもかもは、どうでもよく思えてくるよねえ。

なにも考えず、俺は、ひたすら空白となって湯に同化するんよ。それが１番気持ちええ、……最高の温泉のひとつやねえ。（談）