野村川湯ユース・ホステルは、北海道川上郡弟子屈町川湯字家の前、という住所地に、かつて存在しました。今はもう、ありません。
日本ユース・ホステル協会の記録によれば、1964(昭和39)年に開設され、90(平成2)年に廃止されていて、ユースとしての歴史は25年ほどあります。
開設されてしばらくは、硫黄山の麓の林のなかにある古びた建物の、でも、とても落ち着いた、しーんと静まりかえったユースでした。
ただ、夜になると、漆黒の空にはたくさんの星々が白く輝いて浮かび上がり、広場では、赤く燃えるキャンプファイアの火を眺めながら、時を忘れて、若い旅人たちが悩みや迷いや、たまには愛などを、じっくりと語らうことができた、のだろうと思われます。
そんな様子が少しだけ変わりはじめたのは、1975(昭和50)年頃からでした。
ペアレントが上田上さん、久子さん夫妻へと受け継がれたからです。とはいっても、ユースを取り巻く環境や、ホステラーを迎える姿勢は大きく変わりなく、静けさももちろん、素朴な雰囲気も保たれたまま、でした。
木の葉の落ちる音しか聞こえない、旅の巧者たちに密かに人気のあったこのユースが一変したのは、76年の夏のはじめにやって来たふたりのヘルパーによる影響が、極めて甚大でした。
その年の夏に、「野村川湯小学校」が開校するのです。