オグス(小楠厚子)
道東への、2泊3日(9月3~5日)の車中泊、道の駅を巡るスタンプラリーの旅から、戻りました。
旅のはじまりは、今から43年前の高校3年生の夏。クラスメートのちとせ(新関睦子)が、ひとりで川湯を訪れ、すっかり野村川湯ユースにハマってしまったことを聞き、それならばと、チャック(高松栄子)と私が、川湯へ行ったこと、でした。
そして還暦を迎えた今年の夏、川湯を訪れ、ヒデキに会ったり、川湯温泉駅舎ギャラリーでは、「自由な旅人」展を見て感激し、あの頃にタイムスリップして来ました。
▼真夜中の、餅つき
チャックと私の家は、車で5分ほどの近所にあり、時々、お茶をしに遊びに行ってます。
そんな折に私が、「今週末、なにすんの?」と尋ねると、「ダンナと道東のスタンプラリー。車中泊で、行くんだよ」と、楽しそうにチャックはいいました。私が、コロナ休業のため、毎日が日曜日ということも知っていて、「……ねえ、あっちゃんも、一緒に行く?」と、気をきかせて誘ってくれたのです。
「うん、行く! 行く!」と、すぐに私は大はしゃぎ。旅はどんな旅だって、興奮します。私はこれまで、たくさんの旅行をしてきました。ところが今回のような道の駅で車中泊しながらの車旅って、……楽しそうだわ! 貧乏だった高校生の頃の私たちに、還ったようだからです。私の血が、踊ってきました。
道の駅に泊まってみると、駐車場にはひと夜の安眠を求め、なんとたくさんの道外ナンバーの車が……。神戸、姫路、横浜、品川、盛岡、山形など、全国から押し寄せてました。ひとり旅のおじさん、おじさんと犬、老夫婦など。そこで短い挨拶や何気ない会話が生まれたり、旅の情報交換などすることもありました。でも、もっともっと、コミュニケーションが深まれば、旅の味わいが出るんだろうなぁ、と、考えたりもしました。
さて、車中泊での就寝時です。
前列が、ダンナさま、中列がチャック、後部席が私のベッドで、横川の字の3列で寝ました。初日は、夫婦のイビキの応酬でした。それはまるで、リズミカルな餅つきの音のようなんです。ダンナさまの杵つきのグワーッ、すると、チャックの餅を返す合いの手の、ガヒッ、が反復する。夢のなかにいても、仲がいいふたりなんですよ。
そして夜明けまで、延々と、この餅つきは続くのでした……。
▼私のはじまり
今回の道東の旅では、釧路、根室、斜里、知床、美幌、摩周などの、17カ所の道の駅を訪れ、スタンプを押すことができました。押したスタンプ数に応じて応募すると、抽選で特産品が当たるんですよ。
なにせ道の駅なので、観光地や風光明媚な場所にあることが多く、温泉や、それとグルメにも事欠きません。季節もよく、今回は天候にも恵まれたし、気の置けないチャック夫妻と一緒の旅は、ドタバタしていても楽しくて、いい思い出になりました。
この旅で、なにが一番よかったか? 深く印象に残ったところを告白すると、川湯温泉駅舎ギャラリーで開かれていた、「自由な旅人」展でしたね。
私はチャックのようにこの展覧会のこともよく知らず、会場でいきなり懐かしい写真を見て、タイムスリップしちゃいました。写真展を見て、遅ればせながらユースの歴史なんかもちゃんと分かったし。遅過ぎるかい?
じりじりとノイズの入り交じる吉田拓郎のLPを聞きながら、展示写真をじーっと見てたら、あぁ、私の原点はここにあったんだ、と、今さらながら、気づくことができたみたいです。私のはじまりは、ここにある。そして、チャックとふたりで、ここに還ってきたよ、ってね。展覧会をやってみようと思ったヒデキの心意気も、感じられたりもしました。
17歳の高校3年のあの夏も、チャックと一緒に野村川湯に迷い込み、たくさんの人と友達になれたし、その後も、川湯の仲間たちと遊んだり、騒いだり、お世話にもなったりしてきたことが少なからず積み重なって、今の還暦を迎えた私があるのかな、と気づいて、感慨深く思いました。
これからは、100歳に向かっての長い旅がはじまります。川湯のみんなと、また旅先で再会できることを楽しみにしています。(談)
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